能登復興を願い能登を題材にした昨年の保存会展の作品です
『うっとりべえ』
二代 由水十久 作
令和六年、能登地方は、大きな二重被災に遭いました。被災から立ち上がるべく、加賀友禅技術保存会は、その年の十月開催予定の第四十六回 伝統加賀友禅工芸展のサブテーマに「能登愛を加賀友禅に実現しよう」を掲げ、作品を募集いたしました。その応募作の内の一点がこの主催団体の会長を務めさせていただいている私自身のこの作品です。
さて、能登には、はるか古代よりのびっくりするような微笑ましささえ覚える伝統祭事がある。そのひとつが能登半島七尾の鵜浦で捕らえた鵜を籠に背負い羽咋の能登一の宮気多大社に届け、そこで神事を執り行う【鵜祭り】です。その途中の二泊三日の旅が鵜様道中とよばれる。その鵜様で一年の海や山の幸を占うという国指定重要無形民俗文化財です。
『うっとりべえ』と唱えつつ鵜捕り部は,七尾、中能登、羽咋と白装束姿で旅をする。そして等伯が描き残した我が国水墨画の最高傑作ともされる『松林図』の松林の風景を通る。出発地では対岸に神々しい立山連峰の遠景を拝み(左袖山、肩山に配置)、到着地では外浦の渚に足を濡らすこともある旅である。能登の人々は縄文の彼方の時から自然を畏怖し再生を信仰してきた姿がそこにはある。あくまでも素朴さと穏やかさの中で自然と人が美しく溶け合うように一体となっている姿だ。
この加賀友禅訪問着製作に際し、鵜様は籠より上体を出し解放された中でうっとりべえを愛おしみ見つめ導く繫栄の神、黒式尉の翁のごとく描き改めている。また、うっとりべえの白装束を神官の狩衣旅姿とし着られる優雅さと魅力を加えている。その縦涌文様の中に魚や米の豊穣の祈願を込めたパターンを加飾している。
地色の青味の黄緑色は、能登の自然の優しい穏やかさを表す色とし、松林の表現には、地色に響くグラデーションの複雑な現代的で独自の友禅表現を盛り込んでいる。 令和6年11月
2026年01月09日 08:58
